エネルギーの発見




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ここで一旦力学の話に戻ります。 これ以降の物理学においてはエネルギーが非常に重要な意味を持つからです。


1687年ニュートンの著作「プリンキピア」が公表され、現在ニュートン力学と呼ばれている体系の基本的な部分は確立されました。 しかしこのときエネルギーについてはまだ何も知られていません。 運動量保存の法則はガウスによって既に発見されていましたが、 エネルギー保存則が発見されるまでにはまだ長い年月がかかります。


活力論争

17世紀中頃、力の元をめぐって「活力論争」と呼ばれる大きな科学論争が起こりました。 ニュートンのライバルとして知られるライプニッツは、動く物体には何か内なる勢いのようなもの「活力」があり、 その大きさを $ $$mv^2$ と考えました。 これは動く物体の勢いを $mv$ としていたデカルトに対する反論です。 このどちらの解釈が正しいのかということで大勢の学者を巻き込んだ論争が起こったのです。

これについては答えのないまま論争は一旦下火になりました。 結局 $mv$ も $mv^2$ もどちらもそれぞれに意味はあるようなのです。

エネルギーとは何か

活力が何なのかがなんとなく曖昧な中、 1829年トーマス・ヤングは活力を仕事をする能力と捉えました。 仕事をする能力という意味で「エネルギー」という言葉を初めて用いました。

そもそも仕事とは何か、 人が疲労を感じるのは仕事をしている証拠だと思うかもしれません。 しかし疲労は只の生体反応で、実際は何も仕事をしていなくても疲労は感じます。

仕事とは、荷物を高いところに運ぶことを考えると意味がわかりやすいかもしれません。 荷物の重さもしくは運ぶ高さが倍になれば仕事も倍になるはずです。

$W$ が仕事、$F$ は物体に加えた力、$Δx$ は力の方向に動かした距離です。

同じ仕事をするにしても、てこや滑車を使えばより小さい力で済むと思うかもしれません。 しかし動かす力 $F$ が小さくなれば動かす距離 $Δx$ がそのぶん大きくなることは、古代ギリシャのアルキメデスによって発見されています。 仕事としてはどちらの方法でも変わらないのです。

運動エネルギー

動いているものはその勢いで高い場所にも飛んでいくことができます。 誰かが仕事をしなくても、物体が動いているその勢いによって自ら仕事ができるわけです。

ニュートン方程式から計算すると速さ $v$ で動く物体は $\displaystyle \frac{1}{2}mv^2$ の仕事ができます。 コリオリはこれを物体の活力と考えました。 現在の言葉でいう運動エネルギーです。

位置エネルギー

物体は高い場所にあるだけで、仕事をする能力つまりエネルギーがあるのだと考えられます。

地面に置かれているボールを台の上に運ぶためには誰かが仕事をしてやらなければなりません。 しかし台の上に運ばれたボールは、その後地面に落ちたとしても、摩擦がなければ自力で元の高さまで上ってくることができます。

高い所で静止しているボールと、地面の上で動いているボール、どちらも同じだけエネルギーを持っていると考えられます。

エネルギー保存則

19世紀の中ごろ、マイヤー、ジュール、ヘルムホルツらが、それぞれ独立して「エネルギー保存の法則」という考え方に辿りつきます。

当時の科学者たちは熱機関や電動機の研究が進む中、この世界にはどうも抗えない法則があることに気づき始めたのでしょう。 エネルギーは運動エネルギーや位置エネルギーのみならず電気や熱など様々な形態を持っており、何かが増えれば必ず何かが減ります。 エネルギーのないところにエネルギーを作り出すことはできません。


以降の章で述べる電気や熱やその他の物理現象も、それぞれが複雑な法則で成り立っています。 しかしその法則をひとつひとつ深堀してもおそらくエネルギー保存則を破るような法則は出てこないでしょう。 物理法則には不思議な秩序があるのです。


 


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