先に述べたコペルニクス、ガリレオ・ガリレイ、ヨハネス・ケプラーらによって天体の運動に関する様々な発見が為されてきました。 ニュートンは彼らの発見を結び付け基本的な力学の法則をまとめることを試みます。
ニュートンは、月が地球の周りを回るのは、地上でりんごが落ちるのと同じ理屈なのではないかというアイデアがひらめきます。
りんごの木から真っすぐ地上に落ちてくるりんごと、地球の周りを永遠に回り続けている月。 このまったく違うように見える2つの動きが、まったく同じ理屈で成り立っているとは想像がつかないかもしれません。 しかし地上の重力が月にまで及んでいると考えると月の公転が説明できることに気づいたのです。
地上と宇宙でまったく違うように見える様々な物理現象、そこには共通した力学の法則が働いています。
止まっている物体に力が働いていなければ止まったままであり、 動いている物体に力が働いていなければそのままどこまでもまっずぐ動き続けるはずです。 これはガリレオの慣性の法則と同じものですが、ニュートンはこれを力学の基本法則として取り入れます。
月や惑星が楕円運動をしているということはそこに必ず何かの力が働いているはずです。 ニュートンはそれを万有引力だと考えました。
物体に力が働いたとき物体はどのような運動をするのか。ニュートンは力と運動の関係を次のように定式化しました。
$F$ が力、$m$ が質量、$a$ が加速度です。
■ 質量
ここで質量 $m$ という概念が登場します。
月の上では物の重さが軽くなるのはご存知のとおりかと思います。
ちなみに地球上でも場所によって若干誤差が出ます。
重力が小さい場所では物は軽くなり、体重計に乗れば若干小さな値が出るはずです。
しかし物体は「質量」というどこにいても変わらない量を持っているのだとニュートンは考えました。 地球上のどこにいようと、または宇宙を漂っていようと決して変わらない物体固有の量です。
■ 加速度
そして加速度 $a$ は、物体に力が働いていれば速度が変化し続けることを意味します。
りんごが木から落ちていく間、りんごは常に下向きに引っ張られており下向きに加速し続けます。
物体に力を加えれば、必ずその物体から同じ強さで逆向きの力が返ってくるという法則です。 地面に落ちたりんごは地面を押すと同時に地面から押し返されるためそれ以上落ちていくことはありません。
人が小石を投げたときその手は小石から押し返されています。 押し返された人間が飛んでいかないのは地面で踏ん張っているためです。 無重力空間で物を投げれば人間も反動で後ろにゆっくり飛んでいきます。
地球がりんごを引っ張っているとすれば、地球もりんごから同じ力で引っ張られているはずです。 つまり、りんごもわずかながら周囲に引力をもたらしているのです。 地球は質量が大きいため、地球がりんごに引っ張られてもほとんど影響がないだけのことです。
さて、ここまでで運動の基本法則は述べられました。 力と運動の関係は $F = ma$ という驚くほど単純な方程式で表されます。 あとは重力(万有引力)について詳しいことがわかれば惑星の運動を計算することができるはずです。
ニュートンは2つの物体の間に働く引力に関して次の式が成り立つことを発見しました。
$F$ が力、$G$ は万有引力定数、$M$ と $m$ は2つの物体それぞれの質量、$r$ は物体間の距離です。 $G$ は宇宙のどこにおいても同じであると考えられている定数で、 $G$ の値は現在 $6.6743×10^{-11}$ 程度と考えられています。
ニュートンの運動方程式と万有引力の法則、 これにより月の公転運動も、太陽の周りを回る惑星の公転運動も、 また地上で見られる物体の落下運動についても同じように計算できます。 ガリレオの落体の法則や、ケプラーの3法則もこの数式から説明できるのです。 ニュートンがこの式に辿り着くことができたのは彼らの発見があってこそです。
力学という分野はニュートン以降にも様々な発展を見せますが、このニュートンの発見が基本になります。 そのためアインシュタイン以前の力学はニュートン力学と呼ばれています。 力学の基礎はここで一旦完成したといえるでしょう。